北朝鮮が韓国に砲撃を加え、朝鮮半島はもとより日本でも緊張が高まっていますが、砲撃を受けた延坪島というのは本当に北朝鮮のすぐ近くなんですね。まあソウル自体が38度線からほど近いわけなんですが。
そんな緊張感がある国境線の島として、ぱっと思い浮かぶのは台湾の金門島でしょう。中国のアモイの沖、2km足らずの所にある島でありながら、台湾領である金門島。なぜここが台湾領でなのか、その存在を知った時から不思議でなりませんでした。だって台湾本島からは180kmも離れているんですよ。当然熾烈な戦いがあった事は予想に難くないですが、その戦いに日本人が関与しているとは思いもしませんでした。
この話はその金門島の戦いに作戦参謀として台湾を支えた、陸軍中将根本博の話です。
戦争末期のソ連の対日参戦そして終戦により、中国大陸にいた開拓民は日本に引き上げる際に味わった心苦、中国残留孤児やシベリヤ抑留などいろいろ伝え聞きます。その凄惨な状況に陥った一端は満州国に駐留していた関東軍にあると耳にしたことがあります。それはが軍が民間人より真っ先に引き上げてしまったからだと。
しかしその隣、内蒙古では満州国のようにならなかった、なぜなら内蒙古に展開する駐蒙軍は玉音放送の後も、武装解除を行うことなく押し寄せるソ連軍対峙し、日本人の帰国をサポートしていたからだということを、この本で初めて知りました。
その駐蒙軍の司令官が根本中将。
彼が上層部に逆らい、ソ連から戦争犯罪人として処刑すると脅されながらも武装解除に従わず、邦人の安全の確保に務めたというから立派な軍人です。
その邦人の引き上げに少なからず協力してくれたのが中華民国の蒋介石。彼は国共内戦という状況にあったからこそ、日本を味方につけようとサポートしてくれたのかもしれませんが、根本中将はこのことに大きく恩義を感じます。
そして中華民国の劣勢が明白になったところで、彼はその恩を果たすべく密航してまで台湾に渡り、蒋介石と面会、そして最前線の金門島でその恩を果たす訳です。まさに義に生きる軍人ですね。なかなかできることではありません。
なかなか興味深く、そして根本中将に感服しながら読み終えました。
しかし、ノンフィクションとして調べた史実や証言を元に組み立ててはいるのは判るのですがもう少しすっきり組み立てられなかったのかなぁというのが正直なところ。もう少し根本中将の生き様にフォーカスした伝記仕立てにした方がよかったように思えました。
著 者:門田 隆将
出版社:集英社
四六版:304ページ
価 格:1,680円
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