50年前のモスクワを舞台に、殺人課レオがモスクワを始めとするソ連で、ハンガリーで活躍する話です。
前作チャイルド44も凄かったけど、コイツもとてつもなく面白い!前作でも感じた、昔のソ連の暗鬱とした社会情勢の元、もがき苦しむ主人公や登場人物の描写が凄い。まるで当時のモスクワに住んでいたかのようです。
実際はそんなワケなく、著者のトム・ロブ・スミスは1979年生まれのイギリス人。前作が処女作で今作品が二作目ということですから、今後が楽しみな作家ですね。
読みながらふと思ったのですが、この話の中を通じて流れる暗鬱な雰囲気というのは、あのマッド・デイモン主演でヒットしたロバート・ラドラムの「ジェイソン・ボーン」シリーズに似てますね。
旧ソ連の監視社会という暗鬱な世相、過去その手先となっていたという主人公レオの苦悩、それが自分は暗殺者だったのか?という、記憶喪失のジェイソン・ボーンの苦悩と重なります。
もちろん、同じところばかりではありません。
「グラーグ57」では、一向に心を開こうとしない養女ゾーヤとの関係も重要な軸であり、読み応えあるものになっています。
この話、そういうった全体を流れる雰囲気、主人公の内面描写、そしてアクション部分とどれも秀逸であっという間に読んでしまいました。話自体は、モスクワ、シベリアの強制収容所、ハンガリーの三つのパートに分かれていますが、どのパートも読み応え充分です。
この本、図書館で借りたのですが、ちょっと買おうかと思ってます。
次回作が楽しみです。(映画化されそうな気もする)
著 者 トム・ロブ・スミス
訳 者 田口 俊樹
ジャンル 小説
出版社 新潮文庫
文庫版 (上)382・(下)365ページ
価 格 各 700円
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