先日読んだスーザン・ドゥオーキンの地球最後の種子が面白かったので、別の本、「ナチ将校の妻~あるユダヤ人女性55年目の告白」を図書館で借りてきました。
この本はタイトルの通り、ユダヤ人が迫害される最中のドイツ・オーストリアの第三帝国内で、ユダヤ人の女性がその身分を隠して生き延びそして、55年経ってそのことをまとめた本です。どうやら映画?にもなったようですね。
アンネ・フランクはアムステルダムの隠れ家に潜伏していたのに対し、この話の主人公エーディットは、アーリア人に身分を偽装し、生まれ育ったウィーンからフランクフルトへ移り住み、さらにはナチス将校の妻にもなってしまうのです。
そう書くとしたたかな女性と思えますが、この本を読むとそのようになったのは、決して本人が望んだわけではなく、時代の流れに翻弄されていった結果であることが分かります。本人にしてみれば、生き延びるために必死な訳で「したたか」なんて言葉を使うのはとても失礼に感じます。
もちろんエーディットは大学で法学を学んだ才媛であり、聡明さをもっていたに違いありませんが、それだけではあの狂気の第三帝国内で生き延びることはできません。友人の尽力そして沢山の幸運があったからこそでしょう。
決して望んだわけでもないのですが、ナチス将校と知り合いになり、恋に落ち、ユダヤ人と告白し結婚するまでのことを思うと波乱万丈の一言では言い尽くせません。不安に押しつぶされそうな心の葛藤を思うとよくぞユダヤ人だと告白したなぁと思います
この話の最後にはソ連の侵攻により、ナチスから解放された後のことも少し書かれていますが、ソ連によって友人たちをスパイせよと命令を受け、また自分も監視される立場になったというのも怖い話。ナチスが共産党に変わっただけですから
いろいろな意味で読み応えのある本でした。
著 者:エーディット ハーン ベア ・ スーザン ドゥオーキン(共著)
訳 者:田辺 希久子
出版社:光文社
四六版:353ページ
コメント