この本は、何にでも興味を示し真理を追求するノーベル物理学賞を受賞したファインマンさんの半生を描いた自伝的エッセイ「ご冗談でしょう、ファインマンさん」の続編です。前作は先日読んでとても面白かったので続編を借りてきたというワケです。
ただ、まえがきにも書かれていますが、この続編は少々前作とは趣きが違ってます。
前半はファインマンさんに影響を与えた父親と初恋のそして最初の妻であるアーリーンの話。後半はひょんなことから引き受けることとなったスペースシャトル「チャレンジャー号爆発事故」の事故調査委員会のこと。それはそれで面白いのですが前作というような面白さとはまったく違います。
むしろ、前作を読んでファインマンさんはどんな人か、人となりのイメージを掴めていないと面白くないかもしれません。
前作では父親もアーリーンの話も少ししか触れられていなかったような気がするのですが、でもファインマンさんに多大な影響を与えた人であることは間違えないようですね。
私が印象に残ったのはアーリーンの話。
さすが幼馴染で大恋愛の末に結婚しただけあります。ファインマンさんを上回るような茶目気を発揮したり、あの(笑)ファインマンさんをやり込めるようなエピソードも。
でもそのアーリーンはリンパ腺結核で亡くなってしまいます。彼女が亡くなってしばらくの間、彼は科学者らしく理性的に過ごしますが、ふとしたきっかけで彼女ののことを思い出し悲嘆にくれるます。やっぱりノーベル賞を受賞するような偉大な科学者であっても一人の人間なんですね。
科学者に限らず、政府筋の依頼というのは避けておきたいところですが、引き受けたからには、自分なりのベストを尽くすのがファインマンさん。
スペースシャトル事故調査では、人間関係に悩みつつも真相を突き止める探究心を元に自分流を貫きます。
とかく書類上の調査になりそうな委員会の中でも現場の担当者の意見を聞き、事実を積み上げて真相に迫る姿はさすが。 海千山千の委員の中でも、良き理解者であり親友となったクティナ空軍大将の存在も大きいですね。
まあその彼も、事故原因となったOリングについて、立場上自分では調査できないので、ファインマンさんに調べさせようと誘導していたという食えない人だったようですが...
「ご冗談でしょう、ファインマンさん」だけだと、単に面白いノーベル賞受賞にしか思えませんが、この続編を読んでファインマンさんの人柄の深さについて感じ取れた気がします。
著 者:リチャード P. ファインマン
訳 者:大貫 昌子
出版社:岩波書店
文庫版:355ページ・
価 格:各 1,155円
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