日本兵捕虜秘密尋問所と聞いてちょっと興味を惹かれて読んでみました。
秘密尋問所と聞いて、まず思ったのはひょっとしてアメリカも拷問のようなことをして、捕虜から情報を引き出してたのか?ということ。
でもそれは見当違いでした。戦時中の捕虜の取り扱いを定めたジュネーブ条約を軍部からの反対で批准していなかった日本とは違い、ここに書かれているトレイシーと呼ばれる尋問所では、捕虜を人として尊重し、決して拷問を行うことなく様々な情報を引き出していたようです。ある一点を除いて...
それは尋問所において、盗聴装置を使って捕虜間の会話を録音していたこと。それによって、捕虜から引き出した情報の信頼性の判定や嘘を見破っていたらしいのです。この本においてはトレイシーによって引き出された情報が載っていますがそれの凄いこと
皇居内の建物の配置や三菱重工の戦闘機の工場の配置などなど。
三菱重工の工場は、捕虜から引き出した情報を元に、偵察機を飛ばしさらに精密に調べ、爆撃の際の資料としたようです。まさに丸裸の日本列島ですね。
とかく日本軍は、捕虜からの情報も信ぴょう性を評価することなく、自分たちに有利に思えるものしか信頼しなかったといいますから、この情報量の差も負けるして負けた戦争だったと感じました。
それにしても、アメリカって国は凄いですね。
これらトレイシーに関する情報は、「生きて虜囚の辱めを受けず」を破った日本人捕虜が戦後、日本において不利にならぬよう(もちろん上記の盗聴というジュネーブ協定違反隠しもあったでしょうが)戦後50年以上もの間秘密にされていたというのも驚きだし。
秘密にしたとはいえ、それら文書は破棄されることなく公文書館に保管されているのも驚きです。日本ならさしずめ資料は破棄されているでしょうから...
著者 中田整一
出版社 講談社
文庫版 386ページ
価 格 1,890円
コメント