O.ヘンリー賞やピューリッツァー賞など様々な賞を受賞したこの作品、以前新聞の書評欄で目にした覚えがあるのですが、先日、Rokoさんのところで目にしたのをきっかけに図書館から借りてきました。
O.ヘンリー賞を受賞ということからわかるようにこの本は短編集で、9篇の短編が納められています。
どの話も、著者の出自であるインド系アメリカ人か、あるいはインド人の日常生活を描いた話、インド系の方の日常って全然想像がつかないので、そういった意味ではとても新鮮でした。
気に入ったのは、「三度目の最後の大陸」。
インドを出てイギリスに留学し、アメリカの大学の図書館に勤めることになった主人公が、妻を呼び寄せる前に下宿した先の女主人との交流を描きます。渡米して間もなくアメリカという国にまだなじんでいない主人公と、百歳を超え時代に取り残されたかのような女主人。特に話らしい話をした訳ではないのだけど、でもやっぱり何かを心か通じたのじゃないかなという気になります。
アメリカが舞台の作品には、どれも移住してきたインド人(いやインド人に限らないと思いますが)の異邦人ならではの疎外感が根底に流れていますし、それ以外のインドが舞台の作品では「本物の門番」・「ビビ・ハルダーの治療」のような社会的弱者が主人公で、マイノリティならではの寂寥が根底にあるような気がしました。
でもこれらの話、読み手の立場というか気分によって、色々と解釈が変わりそうです。またしばらくしたら読み返して見たいと思います。
著 者:ジュンパ ラヒリ
訳 者:小川高義
出版社:新潮社
文庫版:327ページ
価 格:620円
yomikakiさん☆こんにちは
おお、わたしのところで目にして読んで頂いたんですね、ウレシイ~!
異国で暮らす人たちの気持ちって、ずっとそこに住んでいる者にはなかなか気づけないものですよね。
不安や孤独感を少しでも減らしてあげるのは周りの人たちにちょっとした言葉だったりするのだと感じる作品でした。
投稿情報: Roko | 2009/03/31 12:12
Rokoさん
新生活の場合に限らず、初めての場所というのは何かと不安がありますよね。旅行の場合はまだ楽しさが先立ちますが、生活する場となると先行く不安感の方が勝っているのがほとんど。
なにかそんなことを感じました。
投稿情報: yomikaki | 2009/04/01 07:54