この本は、秋葉原の事件の前に図書館で借りたのですが、あまりの偶然に言葉を失ってしまいました。いや、凄惨な事件が多発している近年では、もはや偶然ではないのかもしれません。
しかしそれにしても...
犠牲者の皆さんのご冥福をお祈りいたします。
私がこの本に興味を持ったきっかけは、今年4月22日に判決が下された「光市母子殺人事件」がきっかけです。
この事件は被告弁護団の荒唐無稽な主張やそれに対する大阪府知事になった橋本氏からのTVを通じた懲戒請求騒動等など世間を騒がせました。
しかし私が興味を持ったのは遺族の本村洋さんの記者会見です。
遺族の方が談話という形ではなく、記者会見を開くというのはあまり耳にしたことがありません。またその内容が、被害者感情を吐露するというだけでなく、昨今語られる死刑制度(の廃止)についてもきっちりと語る様子に、もう少し本村さんの話を知ってみたいと思ったのです。
この本の冒頭にある言葉に「加害者は『必然』なのだが、被害者は『偶然』なのだ」というものがあります。
この言葉はサブタイトルにある「犯罪被害者が望む『罰』と『権利』」と表裏一体のもの。自ら『必然』的に行動を起こした加害者にはそれなりの『罰』を、『偶然』に事件に巻き込まれた被害者にはきちんとした『権利』を認めよ、当たり前のことです。
この本では本村さんの事件を筆頭に、様々な事件の被害者家族が出てきます。その話を読むにつれ、「罰」と「権利」の現状をあまりにも知らず、また当たり前と思っていたことが当たり前でないとして愕然としました。
そもそも刑罰とは何のためにあるのか?
被害者を満足させる為のものなのか?犯罪を抑止するためのもの?
因果応報とすると、人を殺めたものは命をもって償うというのが一番シンプルです。
罪よりも罰が軽いとなると、抑止力にもなりません。でも加害者とはいえ、国が人の命を奪う死刑制度については、大きく議論すべきことでしょう。
しかしそれと母子殺人事件の被告弁護団の異様さはまったく別次元のことです。
前述の荒唐無稽な主張だけでなく、この本に出ている数々と重ね合わせると、自分の主義主張を通すためにはどんな手段でも取る一団に思えます。どんな手段を取っても良いと考えている姿勢が、自分の主張にこだわりがない、自分の勢力を伸ばすのが一番という集団に思えてなりません。残念ですね。
死刑制度についてはいろいろ議論が必要だと思いますが、被害者に対するサポートはすぐにでも厚くすべきと感じました。
いろいろ考えさせられる本でした。ゆっくり、いろいろ考えてみたいと思います。
4月22日 判決後の本村さんの記者会見全文:1・2・3・4・5・6・7・8・9・10
著 者:藤井誠二
ジャンル:ノンフィクション
出版社:講談社
四六版:279ページ
価 格:1,680円
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