「屠畜」、読んで字のごとく家畜を屠ること、屠殺という言葉の方が一般的ですね。豚や牛、鶏などをシメて精肉することです。
どういうイメージを持ちますか?
かわいそう?残酷?
じゃあ、あなたは肉を食べませんか?魚ならどうですか?
なんだかんだ言って我々は肉を食べるのですから、豚や牛などの命を頂いているわけですよね。でもその屠畜を忌み嫌う。
なんか矛盾しています。忌み嫌うからこそ、屠畜を行う人に対する差別もなくなりません。
じゃあ他の国ならどうなの?
ということで、世界各地の屠畜場へ出かけて行きレポした本です。
著者の内澤さんは女性イラストルポライター。
差別意識は無いとしても、やはり屠畜の現場というのはできれば近寄りたくないもの。
それはどこの国の人であっても同じです。
ところがこの内澤さんは一味ふた味も違います。
屠畜のやり方に興味津々。
職人技のナイフ捌きにうっとり、挙句の果てには自分でもできそうな作業はチャレンジしてみたり...とにかく積極的。
この本は屠畜に対する各国の人の考え方(差別)がテーマであることは間違いありませんが、屠畜技術そのものや、
肉以外の内臓や皮などの処理などにまでフォーカスを当てています。なにせ、どう屠ってどう解体されていくのか、
イラスト入りで解説されているのですから。写真じゃないので生々しさが無いのがいいのかもしれませんが、
知らず知らずのウチに屠畜にの世界に引きこまれていきます。
実際、屠畜に関する考え方も国それぞれ。
イスラム圏ではラマダーン(断食月)明けや犠牲祭では富めるものは各家庭で羊を屠り、家族で祝う。
そして周りの貧しいものに施しを行う のが決まりだとか...
そして屠るのはその一家の主人。
エジプトなどではその光景も子供達に見せ、
自分たちの生活がこういった動物たちを屠畜することで成り立っていることを認識させるのだとか...国によってぜんぜん違いますね。
答えが書いてある本ではありません。
でも読んでみると、きちんと考えなきゃならないことが浮かび上がってくる本でした。
著 者:内澤 旬子
ジャンル:ノンフィクション
出版社:解放出版社
四六版:367ページ
価 格:2,310円
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