昔ほどではありませんが、最近中南米の情勢が慌ただしいですね。共通しているのはベネズエラのチャベス大統領を代表とする反米を掲げる左派政権の誕生。むろんその根底にあるのは民衆の現状への不満なんでしょうね。
この本は5年前に書かれた本ですし、舞台は架空の国リベルタですが、それでも一部の富める者へのさらなる富の集中、腐敗した政府、そんな舞台を良く描いているような気がします(中南米には行ったことがないのですが)
リベルタに住む大友、彼の雇い主である日系3世のヤザワの元を、謎のばあさん、マリーナが訪れたことから話は始まります。居合わせた日本人観光客 知恵と共に隣国に出国しようとしますが、なぜか警察軍に追われるように…
マリーナは一体何者なのか、抱えている荷物は一体何なのか…
今なお中南米を中心に絶大な人気を誇るキューバの革命家 “チェ”ことゲバラ、そして民衆に絶大な人気を誇る歌手 シルビオ、この二人のカリスマの残したものを巡って話はどんどん進みます。
中南米のこんな活劇ものであれば必ず出てくるはずのCIAの陰が薄いのはちょっとご愛敬としても、ぐいぐいと引き込まれるテンポ、練られたストーリー、楽しんで読むことができました。
著 者 井上 尚登
ジャンル 小説
出版社 角川書店
四六版 443ページ
価 格 1,680円
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