ルワンダの大虐殺については、「ホテル・ルワンダ」を観てから、いくつか本を読みましたが、考えてみれば直接の被害者の書いた本を読むのは初めてです。
イマキュレーさんは悲劇の後、国連職員となり、結婚してアメリカに渡り講演活動をしていた際、アメリカの著名な心理学者ウェイン・ダイアーに出会い、この本を出版することになったようです。
この本の出だしには、そのウェイン・ダイアーの推薦文がありますが、それがスピリチュアルとか、神とか書いてあって、のっけからうんざりしてしまいました(私は知らなかったのですがウェイン・ダイアーという人は、ポジティブシンキング系の本を多数書いている人のようです。はっきり言って私にとって嫌いなタイプ)。
しかし本編はイマキュレーさんの体験した事実にグイグイと引き込まれていきます。
ある日突然始まった虐殺。
今まで平和に過ごしてきた村で突然、民族の溝が生まれ殺戮がおきます。仲良く暮らしていたはずの隣人がナタをもって襲いかかってきたのです。
神父さんの家のトイレに隠れて、九死に一生を得ますが、殺戮者の手が幾度となく間近に迫ります。
匿ってくれた神父さんだって聖人君子じゃありません。
初めは自分の家で人殺しをさせないよう匿ったのですが、やがてそれは匿ったことがばれると自分自身が危ないから匿い続けるしかなかった訳なのですから...
事実、そういう神父さんだったからこそ、イマキュレーさんは生き残れたのかもしれません。ルワンダの別の場所では教会でさえ焼き討ちにあっているのですから、無理に正義を振りかざす人であれば たちまち殺されてしまっていたでしょう。
それにしても恐怖に怯えながら狭いトイレで過ごした3ヶ月間。耐えられないような時間だったと思いますが、恐怖から気を紛らわす為に英語を勉強したり、聖書を読んだり、凄い人だと感じます。
著 者 イマキュレー・イリバギザ / スティーヴ・アーウィン
訳 者 堤江実
ジャンル ノンフィクション
出版社 PHP研究所
四六版 372ページ
価 格 1,680円
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