「短篇というには、少々短い長さの小説」とあとがきにありますが、そんな長さの話を20篇以上集めた本です。
そもそも話の長さからいって深い背景まで判らないこと、ドラマチックというより本当にありそうな、そんな情景だということもあって、まるで私小説のような感じがしてしまいます。
でも短いからといって、薄っぺらな感じはしません。
むしろ情景がくっきりと頭に思い浮かび、読んだ後はちょっと余韻が残るような感じ。
この本を本屋で手に取り、一番始めの「琺瑯」を読んだときがまさにそんな感じでした。
むろん、読んだときの気分によるところがあるのかもしれません。
けれど確かに琺瑯の洗面器に爪が当たる、かりん、という音が聞こえるような気がしました。
著 者 川上 弘美
ジャンル 小説
出版社 講談社
四六版 227ページ
価 格 1,365円
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