ミュンヘンを見てきました。
1972年ミュンヘンオリンピックで実際に起きた、パレスチナゲリラによるイスラエル選手団の襲撃事件
。その史実を題材にしたのがこの映画です。
事件後、イスラエル政府は彼らなりの結論を見いだしました。それは事件を引き起こした”黒い九月”のメンバーへの報復。
そして計画を実行する者として、イスラエルの諜報機関モサドに勤めるアヴナーが選ばれ、そして計画は実行へと進行します。
主人公 アヴナー演じるエリック・バナが素晴らしかったです。
初めは柔和な表情で、任務に戸惑いそして標的を消すことに躊躇いがある青年が、人を殺すことに躊躇いが無くなり、殺人者へと変わっていく。最後の方では、自分たちが逆に狙われているという事実を知り、狂気の世界へ足を踏み入れつつある様子が、鬼気迫る演技でゾクゾクと感じられました。
そして標的を消しても、新たな過激派が出てくるという現実。
終わりの無い報復合戦の虚しさ、自分がやったことが果たして正しかったのか...
今に続く血で血を洗う報復合戦、アヴナーの苦悩は今のテロとそしてその弾圧に通じます。
話はイスラエル人のアヴナーからの視点で語られますが、だからといってイスラエルの肩を持つわけでなく、またアラブ側寄りであるとは思えません。
そして、この映画には、イスラエルとパレスチナのどちらが正しいとか悪いとか、こうしたら良いというような明確な結論はありません。
ただ言えるのは報復の連鎖、それはどこかで断ち切らないことには未来はないというスピルバーグ監督の強いメッセージです。それはイスラエルとパレスチナの問題に限りません。
この映画の最後のシーンは、最後の台詞の後もずっと同じ風景を映し出しています。
そこにスピルバーグ監督の強いメッセージを感じます。
そのシーンとはニューヨークの風景。
そう遠くに見えるのは世界貿易センタービル、そうあのビルなのです。
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