久々に読み応えのあるノンフィクションでした。
面白かった!ノンフィクション好きな人にはお勧めです。
今のところ、今年一押しのノンフィクションです。
クラカトアとは、インドネシアのジャワ島とスマトラ島の間のスンダ海峡に浮かぶ火山のことです。1883年8月27日、史上最大規模の大爆発を起こしたこの火山の破壊力はすさまじいものでした。
その島自身をふっ飛ばし、津波は海に浮かんでいた汽船を内陸に2.5kmも押し流し、そしてその爆音はインドやオーストラリア、そしてなんと4,800km離れたアフリカ東岸に浮かぶ島、ロドリゲス島でも聞こえたといいます。
そういった史上最大規模の火山爆発に関するノンフィクションということで興味を持ち、読み始めたのですが、この本はそういった火山の凄まじさだけを書いたものではありませんでした。
邦題ではクラカトアの噴火となっておりますが、原題のKRAKATOA(クラカトア)が相応しいほど、火山だけでない、様々な視点からクラカトアについて記述しています。
自然科学的な視点からは、なぜクラカトアという場所でこのような大噴火が起きたのかということを、動植物の種類を隔てるウォーレス線やごく最近確立されたプレートテクトニクス理論から、決して難しくならないようわかりやすく記述しています。
かと思うと、クラカトアを含むジャワ島におけるオランダの植民地活動の歴史と当時の状況や現地民へのイスラム教の浸透など当時の社会情勢についても、様々な資料から拾い出した史実から描写してます。
そしてこの本のハイライトというべき大噴火について。
その噴火は、ちょうど世界中に張り巡らされたばかりの電信ケーブルを使って、世界中に報道されました。現地の状況はその日のうちに、保険会社のロイズやニュース会社のロイターが全世界に配信しています。そして集まる世界規模のデータの数々。それに判った驚きの事実、クラカトアの噴火の衝撃波地球7周りしていることや、遠く大西洋にも伝播した津波など多数あります。
またクラカトアの噴火によって巻き上げられた粉塵は、地球の温度を下げると共に、様々な色の夕焼けをもたらし、数々の画家たちにインスピレーションを与えたとされます。(昨日、強奪されたばかりのムンクの「叫び」などもそうらしいです)
これら全ての話がクラカトアを中心に、著者の幅広い知識と緻密な調査の結果を元に綴られており、読者を楽しませてくれます。これだけの緻密なノンフィクションってなかなか読めないので、楽しみながら読めました。非常に面白かったです。
ps.脚注が見開き毎にあるのも嬉しいかったです。巻末までいって見るのは億劫ですから...
クラカトアの大噴火
サイモン・ウィンチェスター 著
柴田 裕之 訳
ジャンル ノンフィクション
発行 早川書房
466ページ
価格 2,940円
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