加賀恭一郎シリーズの最新作です。
いやそれどころか帯には加賀シリーズ最高傑作と唄ってありますし、「その看板に偽り無し、と作者からも一言添えておきます。」とまで書いてありますよ(苦笑)
いや面白かったですよ。
このシリーズの特徴は、謎解きというより、事件の背景、関係者の心情を追うことに重きを置いたミステリーで、そのあたりを含めぐいぐい読ませる文章はさすが。
胸にナイフを刺したまま日本橋の麒麟の像の下で死んだ被害者。
被害者がなぜ日本橋に居たのか? 家族さえ分からないその理由を探るべく、加賀恭一郎は予断を持たずに地道な捜査を元に事実を積み上げていきます。
そして被害者と被疑者の関係が明らかになる中で、発覚した労災隠し。一転して被害者と加害者の関係が逆転、手のひらを返すように態度を変える周りの人に、被害者の家族は疲弊していきます。
希望を胸に抱いて、上京してきた被疑者の家族にとっても事件は辛いものです。しかもその被疑者は事件直後の事故で意識不明のまま亡くなってしまったなればなおさら。
そんな関係者の生活を暗転させる殺人事件ですが、加賀恭一郎によって、被害者の行動とその意味、そして被疑者の行動と真犯人さえも徐々に解き明かされ、被害者の想いが家族に伝わっていきます。
すべてが麒麟の翼のもとに...
いろんな物語を紡ぎつつ、一つの小説に纏め上げるのはさすが東野圭吾ですね。
けれど加賀恭一郎シリーズ最高傑作かと言われると、やっぱり新参者の方が良かったですね。最高傑作を謳うにはもう少し話を練り上げたほうがよいのでは。
この本のついていた帯によると、東野圭吾は作家生活25周年記念ということで年内にこの本を含め3冊も新刊を刊行する予定のようです。ちょっと書き過ぎのような...
著 者:東野圭吾
出版社:講談社
四六版:325ページ・
価 格:各 1,680円
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