先日読んだロストトレインが良かったので、その著者のデビュー作「天使の歩廊」を図書館で借りてきました。
ある建築家、笠井泉二を巡る6つの話にプロローグ、エピローグを加えたオムニバス形式のおはなしです。どの話も話者が異なるのですが、どの話からも笠井の作品と彼自身から漂ってくる不思議な雰囲気に魅了されます。
さすがデビュー作ながら日本ファンタジーノベル大賞を受賞しただけあります。
ただロストトレインがミステリー仕立てになっていたので、ファンタジー小説に慣れていない私でもすんなり入っていけましたが、この本は完璧なファンタジー。話としては素晴らしいのですが、ちょっと趣味に合わないというか...
その理由の一つとして、私は古い建物や凝った建物というのは結構好きなんですが、この話に出てくる建物に関してはなぜかそのイメージが沸かないんですよね。建築家のお話なのに具体的な建物の記述がちょっと少ない気がします。むしろこうミステリアスな、ファンタジーっぽいあいまいな記述にしているせいかも知れません。
なかなか難しいですね。
著者 中村弦
出版社 新潮社
四六版 312ページ
価 格 1,575円
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