廃線跡がちょっと気になる僕、僕が奥多摩の小河内線跡でであった平間さんは筋金入りの鉄道ファン。廃線跡が気になり始めた程度で鉄道ファンという訳での無いし、世代も全然違うけど、同じ街に住んでいたというよしみと誠実で謙虚な平間さんとは不思議とウマが合い、いつしか酒を酌み交わすように。
そんな平間さんとの付き合いが1年程続いたある日、突然っ平間さんが失踪してしまった。その最期にあった日の平間さんの様子が気になった僕は、平間さんの知り合いの菜月さんと一緒に平間さんを探し始めた。
というストーリーの、ミステリーっぽいファンタジーノベルです。
ファンタジーノベルってあまりというか殆ど読まないし、鉄道ファンという訳でもない(廃線はちょっと気になるけど)私ですが、著者の温かみのある文章、そしてだんだんとテンポが上がっていくストーリーに惹き込まれ、最後まで面白く読めました。
自分の中にある誰も知らない遠くに行きたいというのは、誰もが大なり小なりあると思います。普段、あまり表面に出てこない要望ですが、ふとしたキッカケでそれが浮上することがあります。
その欲望に流されどこかへ行ってしまうのか、留まるのか。
それは今自分の居場所があるか、あるいは居場所を作ろうとしている(くれている)のかにかかっているんでしょうね。ちょっといろいろ考えてしまいました。
今回中村さんの著作は初めて読みました。
前作『天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語―』はデビュー作にして第20回日本ファンタジーノベル大賞を受賞作だそうですが、そちらも読んでみたくなりました。
著者 中村弦
出版社 新潮社
四六版 291ページ
価 格 1,470円
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