作者は有川浩で「フリーター、家を買う。」といういかにもなタイトル。そしてあの装丁。
てっきり軽い感じのラブコメ路線かと思ってたら、ぜんぜん違いました。ちょっと暗めのシリアスな話でした。
主人公は大卒で入った会社を3ヶ月で辞めて以来、フリーター生活を続けている誠治。
ちゃんと就職しなきゃと思いつつも、実家でだらだらと気軽な生活を続けてしまっています。そんな中、里帰りした姉によって、母親がうつ病を発症していることが判明したから大変。
とまあ、ちゃらんぽらんだった主人公が、母親のうつ病を機に奮起し、父親との関係を修復、母親を気遣いつつ就職し、母親の為に家を買う。そんな話です。有川浩の他の話のようにラブコメ的な要素はほんの少しだけ入ってますが、全般を通じて真面目そのもの。有川浩もいろんなジャンルの小説にチャレンジしているようですね。
いわゆる正統派の有川浩路線を期待している人にとっては、面白くないかとは思いますがこれはこれで悪くないですよ。始めはお先真っ暗に思えていた誠治が、だんだんと章が進むにつれ、たくましく大人になっていき展望が開けてくる。まさにトンネルを抜けていくようで、先が見えないフリーターへの著者からのエールのように感じられてきます。
あとがきを読むと著者自身、卒業して内定が取れずにフリーターとして過ごした時期があったそうで、そういった意味でこういう逆境スタートがすんなり書けたようですね。
著者 有川浩
出版社 幻冬舎
四六版 309ページ
価 格 1,470円
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