今回、真介がリストラを請け負うのは、英会話学校、旅行会社、自動車販売会社に出版社の四つ。以前の二冊と違うのは、前は真介のストーリーにウェイトが置かれていたのに対し、この第三弾ではそれぞれのリストラされる側の人たちにより重きを置かれているところでしょうか?(以前より一章一章が長くなった気もしますしね)
とかく暗くなりがちな話の中で、それぞれリストラされる側の主人公が前向きに仕事を辞められるところが救い。
特に三つ目の自動車販売会社の話が良かった。自動車販売会社の不器用なメカニックが、彼を頼って整備を依頼してくる客の尽力によって会社をやめて独立するという話。これだけみるとベタな、お涙頂戴もの(実際そうなんだけど)ですが、仕事に対する真摯な姿勢がとても心に響きます。
この話に限らず、このシリーズでは仕事に対する姿勢というのがどういうものというのがとても考えさせられます。もちろん正解はありません。人それぞれです。仕事に一生懸命打ち込む人たちもいれば、それを単なる金稼ぎの手段として考える人達もいます。それはこの話の中に限らず、実際の身の回りにもいろんな人がいますよね。
私はどちらかというと後者のポジションに近いのですが、それでもやる以上はきちんと仕事をこなしたいとは思っています。しかし日々を過ごしていくうちにだんだんと流されて行くような...
そんな惰性に流されないように、時折仕事に関し(仕事に限った話ではないと思いますが)、見つめ直すというのはとても大切だなぁと実感しました。
話は変わりますが、このシリーズ1月からNHKで全六回でドラマ化されていたようで、たまたま出かけた伊豆のホテルでみてしまいました。真介役は坂口憲二、陽子役は田中美佐子でしたけど、真介はもう少し軽薄に、陽子はもう少し正確がキツめなキャスティングでも良かったんじゃないかなぁーと...まあでも面白かったですけどね。
著者 垣根涼介
ジャンル 小説
出版社 新潮社
四六版 297ページ
価 格 1,575円
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