ジェフリー・ディヴァーの「リンカーン・ライム」シリーズの新作です。
今度の相手は個人のあらゆる情報を集め分析するデータマイニング技術を活用する殺人犯が相手。
自らの欲求を満たすために被害者の行動パターンを分析し罪を犯すだけでなく、その犯行を赤の他人に擦り付けるという卑劣な行動を取ります。
その被害にあってしまったのが、幼い頃は兄弟のように過ごしたのにとある事をキッカケに音信不通になってしまった従兄弟のアーサー。 アーサーはこの犯人によって、殺人犯の濡れ衣を着せられます。ライムは長年のわだかまりを捨て彼を救うことができるのか?
データマイニングというのは聞きなれない言葉ですが、いわゆるPOSをもっと複雑に推し進めたものといえばよいのでしょうか?
POSはご存知のようにその商品がどんな時間にどんな人に売れたというのを管理するもので、商品の発注計画に役立てたり、商品そのものの企画に反映させたりするシステムです。(よく例に出されるのがコンビニのレジで男女別、年齢別に情報を打ち込むってヤツですね)
こういった情報をたくさん集め、結びつけるとどういうことができるのか。
その人の行動パターんが把握できますよね。旅行好きな人、音楽好きな人。いろいろなデータを収集すると、気付かなかった関連性が見えてくるかもしれません。ジャズ好きな人にはスコッチを好む傾向が強いとか。同じジャズ好きでも、CDで聞く人とコンサートに出かける人では行動パターンがちょっと違うかもしれません。
こういう傾向を導き出して、いろいろな企業活動に役立てるのがデータマイニング技術です。 いやーほんと恐るべき時代になりましたよね。こういった情報が匿名で扱われるなら、まだ許せますが個人情報と紐付いた時には恐ろしいですよね。自分の行動が把握されているワケですから...
今回の犯人はこれらの情報を駆使し、動機や状況証拠がありそうな一般市民に、疑問の余地の無い証拠(血のついたシャツ、凶器など)をおくことによって罪を擦り付けるわけです。当然それだけ証拠がそろっていれば、警察だって自信を持って逮捕しますし、裁判だって文句無しの有罪でしょう。
ところがこの揃いすぎている証拠に、逆にライムは疑問を持ちます。
その疑問をきっかけに過去の事件を洗ってみると、同じような事例があることを発見します。
ここからはライムシリーズの真骨頂。
犯人との駆け引き、集まる証拠、徐々に追い詰めていくライムらに、犯人はライムやアメリアの個人情報を改ざんすることによって反撃します。果たしてライムは犯人を追い詰めることができるのか
いやー読み応えあって面白かったです。
それに今回の話は、今まではライムとアメリアが中心のストーリーでしたが、今回はパトロール警官のプラスキーが重要なポジションを占めています。その一方で悲しい出来事も発生するなど、ライムシリーズのファンにとしては、目が離せない一冊でした。
著 者 ジェフィリー・ディーヴァー
訳 者 池田 真紀子
出版社:文芸春秋
四六版:527ページ
価格:2,500円
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