ブッシュ政権が、なぜアフガン軍隊を派遣しイラクに戦争を仕掛けたのか、その内情に迫ったノンフィクションです。
あれだけの諜報能力があるアメリカがなぜ判断を誤り、イラクが泥沼化したのか以前から不思議だったのです。
イラクには大量破壊兵器など無かったことなどは、すでに日本の新聞などで知ってはいたものの、なぜそんなような事態に陥ったのかは、日本の新聞では検証しているものは乏しく、ネットでこの本を知り読んでみたワケです。
まあ結論からいうと、ブッシュ政権内での、現実主義者とネオコンとの確執、そしてその隙間をぬって暗躍した亡命イラク人に政権が踊らされてしまったというのが実情のようです。
チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官などのネオコンと呼ばれる人たち。彼らも決して私利私欲に基づいて行動したわけではありません。
ただ都合の悪い情報には耳を傾けず主張を繰り広げた結果、私利私欲を追求する亡命イラク人のガセ情報に引っかかり、戦争へと突き進んでいったとようですね。あまりにもな盲目的であったと
でもわからないのが、なぜブッシュ大統領がその意見に従っていったのかという点。
ブッシュ政権全体がネオコンといった訳ではなく、パウレル国務長官やアーミテイジ副長官を中心とする現実主義の穏健派が激しくその意見に対立していたわけですから。
この本ではブッシュ大統領への言及はきわめて少ないので正直わかりません(ブッシュ大統領にインタビューしていないという事から意識的に言及していないのかもしれません)
けれど結局のところ「彼は大統領に相応しくなかった。」そう結論づけているような気がしてなりません。やはり大統領たるものあらゆる可能性を検討し、多角的で様々な情報を入手した上で方向性を指し示すというのが超大国アメリカの大統領の資質だと思うのですが...
それにしても、ネオコン呼ばれる言葉は今までも知ってはいましたが、それがどういう人を指すのか、今までなんとなくとしか判りませんでした。
イメージ的にはアメリカ軍の人々かと思っていたのですが、違うんですね。 所謂制服組と呼ばれる軍の前線にいる人たちやCIA等は、戦争に反対していたという事実を知ってちょっと驚きました。
日本の新聞やTVで報道されなかった、ブッシュ政権の内情を知るにはとても良い本だと思います。
著 者:菅原 出
出版社:講談社
文庫版:302ページ
価 格:1,890円
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