ご存じ村上春樹の7年ぶりの長編。
発売から約一ヶ月で2冊合わせて約200万冊に達するというとてつもない売れ行きで、ニュースにもなりましたね。
今回のこの本は内容が事前に広まることを防ぐ為にいわゆる事前の書評等でのプロモーションをしなかったところが、期待感を募らせた部分もあったのかもしれませんね。
でも確かに自分の読む前に内容を知ってしまうということや、アレコレ書評を読んでしまうというのは本を読むおもしろさをスポイルしてしまいますよね。
書評はいろんな本に出会うきっかけとなるので、それはそれでいつも目を通すのですが、この本のように書評など読まなくても絶対に読むと決めている人が多い場合は、かえって邪魔ですから。
かくいう私も村上春樹の新作なら絶対に読むと決めていたので、読み終えるまでは書評等を読むのを避けてました。
<以下ネタバレ注意>
村上春樹の本って、ノルウェーの森に代表されるような普通の世界の話と、ねじまき鳥クロニクルに代表されるようなちょっとパラレルワールドっぽいというか、ファンタジーぽい作品とに分かれますが、この本はちょうどその中間かな?比較的現実的な二つのストーリー、すなわち青豆と天吾の二人の主人公の話が平行して進んでいきます。
しかし今回の話って、今までの村上春樹の作品のエッセンシャル的な要素がぎっしりですね。
青豆と天吾のラブストーリー(最後まですれ違いだけど)は、まるで「国境の南、太陽の西」の島本さんと主人公の始(はじめ)のようだし、題材は言わずとしれたアンダーグラウンド(オウムというより、どちらかというとヤマギシ会ですが)、パラレルワールドっぽい部分はねじまき鳥クロニクルなどなど。
そうしてみると登場人物もなんとなく似たような存在の人が結構います(下卑た存在の牛河なんて最たるモノですよね)。巫女的な存在として少女が出てくるところもしかり。
とはいうモノのやはり話に深みがあって、読み手にいろいろ考えさせられるストーリーというのはさすが村上春樹。読み終えてから1週間ほど経っていますが、未だにあれこれ考えてます。やはり衝撃的な青豆の物語の結末のせいでしょうか?
でも青豆の物語だけでなく、天吾の物語の結末とセットで考えないと意味をなさないと思いますし、しばらく、読み戻したり考えたりする日が続きそうです。
著 者:村上春樹
出版社:新潮社
四六版:544ページ ・ 501ページ
価 格: 各 1,890円
コメント