50年前のソ連で次々と起こった子供の猟奇殺人事件。
その事件の犯人を追い詰める主人公レオという話なのですが、これがまた面白い!この本はCWA(英国推理作家協会)賞を受賞した作品らしいのですが、それも納得です。
この本は単純な刑事対殺人犯という話ではありません。
もちろん刑事対犯人という軸は重要ではあるのですが、それより重要なのが昔のソ連の国家対個人という軸が加わり話が複雑なものとなっていきます。だからか昔のソ連を舞台としているのにもかかわらずロシアでは発禁の処置がとられているそうです。ソ連が崩壊してからずいぶん立つのにちょっと不可解ですけどね。
この本は上下の2巻構成になっていますが、猟奇殺人事件の話は下巻からが本格的に始まるので、上巻はソビエトの閉鎖的なというか、陰湿な雰囲気をが、そこかしこに漂い、どういう国であったのかというのが頭の中にすり込まれます。
そして下巻、主人公がようやく連続殺人事件に気付き捜査に着手しますが、そこで立ちはだかるのがソビエトの国家。単純な殺人犯を追い詰めるという行為自体も、理想を語るあまり連続殺人犯などいるはずがないという現実を見ない国家に阻まれる。それどろか主人公の命さえ危なくなるのです。
正直、上巻はこの手の話にく比べテンポが遅くて、面白くないなぁと感じたのですが、下巻に入ると一気にテンポが早まり引き込まれてしまいました。
読み終えてみると、国家とは、夫婦とは何か、いろいろ考えるさせられ部分もありとても面白く読めました。
著 者:トム・ロブ・スミス
訳 者:田口俊樹
出版社:新潮社
文庫版:(上)394ページ・(下)383ページ
価 格:(上)740円・(下)700円
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