この本のタイトル、そして表紙の写真を見れば、この本がどういうノンフィクションか想像がつくかと思います。
黒人やプエリトリカンというアメリカ社会におけるマイノリティーの底辺に属する男達が文字通り、裸一貫、己の拳だけで頂点に上り詰め、そして引退した後、どう過ごしているのか。ホセ・トレース、マイク・タイソン、ジョージ・フォアマンなどのチャンピオン達の行く末をたどったノンフィクションです。
スポーツもののノンフィクションなのですが、社会派ノンフィクションでもあり、私のようなボクシングの素人でも十分面白い、得るものがありました。
例えばマイク・タイソン。私のタイソンのイメージは数々の事件を巻き起こす粗野なイメージが強かったのですが、この本に書かれているような彼の育った境遇、そしてチャンピオンに上り詰めても、プロモーター達にいいように搾取された状況を知って、大分見方が変わりました。
他の元チャンピオン達の境遇も似たり寄ったりで、あれだけ華やかなイメージがあっても引退した後は慎ましい生活を送ってるんですね。
それだけだとこの本は救いようが無い話になりがちなのですが、この本の素晴らしいところは著者と元チャンピオン達の間が近いこと。
何年も時間をかけて関係を作り上げてきた著者が引き出す、元チャンプ達の言葉一つ一つは、実に胸にしみいりますし、また元チャンプ達に注ぐ著者の視線が実に暖かく、まるで家族のように感じます。
本来、客観的に書くべきノンフィクションでは失格なのかもしれません。けれどそんなこと気にならない位の素晴らしいノンフィクションだと思います(amazonのカスタマーレビューでココまで高評価のノンフィクションって初めてみた気がします)。実は私、この本は図書館で借りたのですが、買おうかと思ってます。それくらいお勧めです。
著 者:林 壮一
出版社:新潮社
四六版:224ページ
価 格:1,470円
yomikakiさん☆こんばんは
成功に見合うだけの頭脳や良い友人を持っていないと、結局は元に戻ってしまうという厳しい現実でしたね。
そうならないための教育の大事さを痛切に感じました。
投稿情報: Roko | 2009/03/18 23:03
Rokoさん、
頭脳はさておき、環境というものは実に大切ですね。それが教育だったり、仕事の相手だったり...
アメリカにはアメリカンドリームという言葉がありますが、成功者に群がる搾取する人間達がはびこる国でもあるという現実がとてもむなしく感じました
投稿情報: yomikaki | 2009/03/19 07:41