この本は、おそらく光母子殺人事件の本村洋さんの発言をモチーフに書かれたんじゃないかと思います。
ストーリーは妻を亡くし一人娘と暮らしていた、父親が娘を暴行された上に殺され、犯人の少年たちに復習するというストーリーです。
こういうストーリーだと復讐の鬼と化した父親像を思い浮かべますが、主人公である長峰は犯人を追い詰める過程で、ただ単に目的遂行の為に行動するのではなく、様々な人とのふれあいを持たせることによって、人間的な温かみも見せています(この辺が東野圭吾のうまいところでしょうね)
逆に犯人の少年たちについての記述が少なく、こちらの方が冷徹に感じます。もっとも犯人うちの一人(と言っても車を貸した程度の荷担ですが)はストーリーを成り立たせるために重要な鍵となっていますが...
暴行事件、そしてその後の復讐劇に対する様々な人々の反応。
あくまで息子を信じかばう母親。復讐に対し複雑な感情を持つ警察内部。いやらしく報道する週刊誌やTVといったマスコミ、長峰の人間性に触れそっと応援してしまう人。
これら描き出される人々の行動そのものは、決して現実離れしたものではありません。
終わり方もそうですが、全般的に暗い話ですが、この手のテーマというのは本当に考えさせられます。
著 者:東野 圭吾
ジャンル:小説
出版社:角川グループパブリッシング
文庫版499ページ
価 格:740円
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