大人になった今はビールって無くてならないものになっていますが、 初めて飲んだビールの味って覚えてますか? すっごい苦くて、「なんじゃこりゃ!」と思いませんでしたか?
やがて大人になって味覚が変わってきて美味しく感じられるようになりますが、 ふとあのとても苦く感じられた子供の時が無性に懐かしく感じることがあります。
この話は、小学校6年生の時秘密基地で飲んだビールのエピソード(第一回ビール祭)
から始まる少年達の成長とビールについて語られたお話です。
またその話の間にビールにまつわるエッセイが挟まれているという、ちょっと変った構成になっています。
ガキ大将的な正吉、頭が良い広治郎、ドンくさいけど愛嬌のある勇、そしてボーイッシュな女の子薫。この四人の成長物語なのですが、 いわゆる女の子がアイドル的存在になっていないのがいいですね。
当然成長するに従って転校・進学の為の別離があります。
けれども、折に触れて開かれるビール祭と称する飲み会。
そこでは幼なじみだからこそできる話があります。旧交を温めたり逆に反発したり、夢を語ったり。
そんなエピソードを繋げながら、30歳になって開かれる本物のビール祭へと話が進みます。
本編は読後感も爽やかな、本当にビールのようなお話でした。
途中に挟まれているビールに関するエッセイもなかなか興味深いです。
あの「目には目を」のハンムラビ法典にもビールに関する記述があるとは知りませんでした。
「目には目を、手には手を」ですから、当然「ビールにはビールを」なんですよ。
「ビールに混ぜ物をして売った者は、ビール樽に詰めこんで溺死するまでビールを注ぎ込む」ですって...
ああ恐ろしい。
こういったフード系の話ではお決まりですが(笑)、美味しいビールが呑みたくなりました。
ビールダッシュ!
著 者:竹内 真
ジャンル:小説
出版社:東京創元社
四六版:316ページ
価 格:1,785円
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