シャクルトンは南極大陸横断に挑戦した探検家なのですが、彼が有名になったのはその探検で船を失い南極圏を彷徨いながら、一人の犠牲者出さなかった点にあります。その17ヶ月間が綴られた「エンデュアランス号漂流」は読み応えのある名作で、アラスカで命を落とした写真家 星野道夫の愛読書だったというのもわかります。
その不屈の精神とリーダーシップで知られるシャクルトンですが、実はその影で命を落とした人たちがいました。本隊をサポートすべく結成されたロス海支隊です。この本は、そのロス海支隊の壮絶な戦いについて綴られた本です。
ロス海支隊の使命は、横断してくる本隊をサポートする為に南極大陸の反対側から補給所を作り、支援物資を備蓄すること。物資が少なくなってくる本隊にとって言わば生命線となるワケであり、非常に重要な任務と言えます。
華やかな本隊と違い寄せ集めのメンバーですが、本隊をサポートするという使命感で全員がブリザードの中、奮闘します。本隊は横断どころか、南極大陸にも上陸していないというのに...
読んでいる方としては本隊がどういう境遇に陥っていたのか知っているだけに、その奮闘ぶりや使命感に心を打たれます。
極限状態での心理状況、隊の分裂の危機など、「エンデュアランス号漂流」とは違った生々しさで迫ってきます。、「エンデュアランス号漂流」が読み返したくなりました。
著 者 ケリー・テイラー=ルイス
訳 者 奥田 裕士
ジャンル ノンフィクション(航海記)
出版社 文藝春秋
四六版 373ページ
価 格 2,000円
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