「蝉しぐれ」/「たそがれ清兵衛」など藤沢 周平の作品にたびたび登場する架空の藩、海坂。その海坂藩を舞台にした短篇集が海坂藩大全です。
海坂藩は藤沢氏の故郷、山形の鶴岡市にあった庄内藩をモデルにしているそうですが、美しい自然、四季折々の風景がまるで目に浮かんでくるようです。
小説ですから、お家騒動、商人との癒着、隠密との暗闘などを題材にした話ではあるのですが、海坂藩はそんなにゴタゴタが続いているのかと、ちょっと心配になってしまいます(笑) むろん各話の間に関連が無くたって全然構わないのですが、あまりにもリアルな設定に実在の藩の実在の事件であるかのように感じてしまいます
この海坂藩大全には上巻で10話、下巻で11話の計21話の作品が収められています。
どの話がいいかは好みがあるかと思うので一概に言えないと思いますが、私が好きなのは「泣くな、けい」と「切腹」かな。
「泣くな、けい」は、奉公人のけいが、主人の替わりに藩主の宝物である短刀を取り戻す話。
「切腹」は絶縁関係にあったけど、無二の親友であった男の真相を調べ、身の潔白を証明する話。
どちらの話も、人を信じることがテーマになっていて印象深かったです。
著 者 藤沢 周平
ジャンル 時代小説
出版社 文藝春秋
四六版 474 / 395ぺージ
価 格 各 1,600 / 1,500円
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