真保裕一の新作ということで読みましたが、社会派というか大河ドラマ系というか、今までのちょっと毛色が異なる小説です。
太平洋戦争勃発によって、その運命を狂わされたアメリカ在住の日系2世達。彼らの苦悩を描いた小説ですが、単純に日系2世の若者がアメリカ社会の偏見の中で軍隊に志願し、そして戦う、それだけの小説ではありません。
この手の話であれば、日本という国を信じている1世達とアメリカで生まれ育った2世の世代間の考え方の違いは必ず取り上げられますが、対立軸はそれだけではありません。
幸運にも成功した移民達とそうでない人たち。
いったん日本で教育を受け、アメリカに帰国した帰米組と言われる2世
日系人の比率が高かったハワイとそうでない西海岸の違い。
白人優位のアメリカ社会で、日系社会も一枚岩ではありません。
この小説の主人公達、ジロー・ヘンリー・マットら志願兵はいろんな意味でそういった日系社会の縮図であり、そこに端を発するストーリーは複雑に絡み合っていきます。
正直この話、上巻では、その主人公達の背景が主に綴られているだけで、イマイチおもしろみに欠けていますが、下巻に入るとだんだんとテンポが良くなってだんだんと面白くなってきます。
あっというような結末はありませんが、充分に読み応えのある小説であり、また戦争の前と戦争の後、それぞれの立場がどのように変わったかということも考えると、考え深いものがあります。
やっぱ大河ドラマ系の小説ですね?
著 者 真保裕一
ジャンル 小説
出版社 小学館
四六版 608・656ページ
価 格 各1,995円
読み応えありましたね。真保氏の作品にしては珍しく、上巻に時間がかかってしまい、一体いつになったら読み終えるのか、と思いました。
私は下巻の後半以降にようやくエンジンがかかりました。
ヘンリーをどんどん嫌いになっていく自分がいました。
投稿情報: じゃじゃまま | 2006/08/16 16:19
じゃじゃままさん、こんにちは。
出だしから引き込まれることの多い真保裕一の本にしては確かに珍しいですね。でも3人の日系人をきちっと描く為にはやむを得ないでしょう。
ヘンリーは幸せな将来が待っていたはずなのに、戦争によってどんどん狂わされていく様子が哀しかったですね。
あんなことが二度と無いように祈ります
投稿情報: yomikaki | 2006/08/17 00:04