この本は低いカースト出身、盗賊となり投降した後、インドの国会議員となりそして暗殺されたプーラン・デヴィが口述筆記(彼女は文盲)によって綴られた自伝です。 自伝ですから、もちろん自分に不利なことはあまり書かれていないであろうことは容易に想像つきます。
しかしそれを割り引いても、インドの貧しい農村における実情には驚きました。生まれてから、幼くして結婚させられ、レイプされ、盗賊となり、復讐を遂げ、そして警察に投降するといった半生はまさに壮絶としか表現のしようがありません。
村の有力者の言いなりの警察、幼くして結婚させられるそして持参金制度のある結婚。なんとなくそういうことがありそうだということは理解できても、実際に虐げられてきたプーランの言葉を読むとそれが意味することが、生々しく伝わってきます。
カースト制度についてもそうでした。
子供の頃、インドにはカースト制度というものがあって、建前上無くなっているが現実には残っていることは勉強しました。しかしそれがなぜ無くならないのか、不思議でなりませんでした。
この本の中では、実はプーランはカースト制度自体を悪いとはどこにも書いていません。むしろプーランは自分とは違うカーストの人間を、カーストが違うということだけで信用できないとも言い切ってます。
もう生活の中にカーストが染み着いているので、その存在自体も疑問すら感じてないようでした。
インドというと象やカレー、人口が多い国、みんなで踊りまくるインド映画、あるいは最近IT産業の振興に熱心な国ということぐらいしか思い浮かびません。そんな国の中でさらに農村の実情について初めて知った気がします。
この本には書かれていませんが、その後彼女は国会議員になり、インドの農村の人々の生活を変えようとしていきます。しかし残念なことに2001年に暗殺されてしまいます。
彼女の遺志、インドの農村の変革を願わずにはいれません。
著 者 プーラン・デヴィ
訳 者 武者 圭子
ジャンル ノンフィクション(自伝)
出版社 草思社
四六版 (上)251ページ・(下)253ページ
価 格 各1,680円
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