今日のキリスト教の根幹である聖書。
その聖書は、マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネの4つの福音書、使徒書、パウロの書簡などで構成されます。現在のこの形になったのは西暦200年頃といわれてますが、その頃はマリアの福音書そしてユダの福音書を正典にもつグノーシス派など様々な宗派があったそうです。
しかし新約聖書の編纂・普及により、もともと異端と見なされていたそれらの福音書は失われていきました。その失われたと思われたユダの福音書が発見されたということは、原始キリスト教の姿を知る重大な発見です。
今日まで裏切り者の代名詞とさえされるユダ。しかし彼は本当に裏切り者であったのか?現在の新約聖書の中でさえ、矛盾と思われる記述があります。
果たしてその内容はいかに。
とまあ書きましたが、この本はそのユダの福音書の内容にフォーカスした本ではありません。むしろそのユダの福音書が発見、解読されるまでの数奇な運命について綴ったドキュメンタリーです。
ユダの福音書は1970年代にエジプトの郊外で発見されました。しかしその発見は学術的な調査ではありませんでした。エジプトの貧しい農民によって盗掘されたのです。
その発見の経緯から、その後もこの書物はどちらかというとアンダーグラウンドな世界をさまよいます。
盗難に遭ったり、売買されたものの支払われた小切手が不渡りになりそうだということで、争われたり...
1600年もの長い間、奇跡的に生き残ってた文書はその間に劣化が進み、また一部は切り取られ売りさばかれるという事態まで起こってしまいます。
最終的にはマエケナス財団に買い取られ、ようやくユダの福音書は長い旅を終え、復元作業へ入ることができました。その復元をサポートしたナショナルジオグラフィック協会がドキュメンタリーに仕立てたのがこの本です。
けれどですね...
はっきり言って文書ヘタクソです。
たぶんこれは訳のせいじゃなくて、元の文書がまずいのだと思います。
余計なエピソードが多すぎて話がよく見えません。
ひょっとしたらこれは文章が先ではなくて、ナショナルジオグラフィックTVのTV番組が先で、それをただ単にノベライズしただけなのかもしれません。
せっかく興味深い話と題材なのにもったいない...
著 者 ハーバート・クロスニー
ジャンル ノンフィクション
出版社 日経ナショナル ジオグラフィック社
四六版 392ページ
価 格 1,995円
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