毎朝、必ずみんなで揃って食べる朝食。そんな佐和子の家族。 そんなある朝、お父さんが突然、『父さんは今日で父さんであることを辞めようと思う』と突然宣言した、そんな場面から話は始まります。
始めのうちはさらりとした読みやすい文章で、幸せな家族の中でお父さんの宣言による人間模様を描いた小説なのかな?と思います。
けれど読み進めるうちに、幸せそうに見えるだけで実は佐和子の家族はみんな行き詰まっていることが判ってきます。
5年前に自殺未遂を起こしたお父さん、そのせいで家を出て行ったお母さん、恋人を作っても心を通わせられないお兄ちゃん、梅雨時になると体調を崩してしまう佐和子。
父さんの自殺未遂の直接的な原因は、はっきりとは出てはきません。 家族の間の仲が悪いわけではありませんし、だれかが悪い訳ででもありません。
そんなもがき苦しんでいる家族と、かかわりのある周りの人たちの様子を淡々と、いやむしろ爽やかに4編の短篇で、描いています。
読みやすい文章で一気に読めますが、いろいろ行間から感じ取れるものもあります。また最後の一遍「プレゼントの効用」では、凝り固まっていた家族の関係が解けていく様子が書かれていて、なかなか感動的ですよ。
著 者 瀬尾 まいこ
ジャンル 小説
出版社 講談社
四六版 231ページ
価 格 1,470円
コメント