カリオストロ伯爵といって思いつくのは、間違いなく映画 ”ルパン三世 - カリオストロの城” でしょう。
いまや巨匠となった宮崎監督の名作であり、アニメファンならずとも見たことある人が多いと思います。(あまり古さを感じませんけど 26年前の作品なんですね)
そのカリオストロ伯爵が実在の人物だと知って、興味を持って読んだ本がこの本です。
実在のカリオストロ伯爵は、フリーメイソンのメンバーであり、魔術師、医師、詐欺師そして錬金術師という、"カリオストロの城" 同様に怪しい人であったようです。
そもそも彼は伯爵でもなんでもなく、イタリアのシチリアで生まれ育った ジョゼッペ・バルサモというチンピラでした。その彼が少しかじった薬の調合の知識を元に、マルタ十字軍にもぐりこんだところから話は始まります。そこで彼は薬剤師としての腕に磨きをかけ、錬金術の知識を見につけます。そしてローマで妻セラフィーナを娶り、詐欺師の腕を磨きつつロンドンに向かいます。ロンドンではフリーメーソンに入会、そしてその時より、カリオストロ伯爵を名乗り始めるのです。
彼はフリーメーソンのメンバーであることを利用し、怪しげな治療、錬金術、交霊会、そして巧みな話術でヨーロッパ各地の貴族達に取り入ります。一方で、彼は貧しい人々に対しては無料で病気を治し、庶民の間では熱狂的な人気を得ます。
そんな彼を面白くおもわない人はたくさんいます。ロシアの女帝、エカテリーナもその一人です。庶民の間の人気や貴族への浸透から、彼は革命を扇動しているのでは勘ぐり、彼を国外追放します。その後、彼はヨーロッパ内をポーランド、パリ、ロンドン、スイス、そして祖国イタリアと、転々とします。
パリではマリー・アントワネットの「ダイヤの首飾り事件」に渦中に、ロンドンでは悪徳ジャーナリストとの中傷合戦と、彼の行く先々は必ず騒ぎが起こります。そして彼は祖国イタリアに帰国しますが、妻の告発によりヴァチカンに捕えられ、幽閉され、とうとう獄死してしまいます。
とまあ、怪しく波乱万丈の生涯を追ったこの本を読むと、人々の興味を惹くオカルト、庶民からの絶大な支持と、カリオストロ伯爵が伝説であることがよくもわかる気がします。また読んでいて感じたのは、18世紀のヨーロッパの社交界とは魑魅魍魎の世界だということ。お互いを騙しあい、成功したものには詐欺まがいのことをしたり、足を引っ張ったり...
一番怪しいのは、カリオストロ伯爵ではなく、社交界そのものかも知れません。
この本でひとつ残念なのは、内容は興味深くて面白いのに文章が読みにくいこと。日本語訳が巧くないのかな?とも思いましたが、文章の組み立てから考えるとと原作の文章が非常に読みづらいものであったのだろうなという気がします。残念
著者 イアン・マカルマン
訳者 藤田 真利子
ジャンル ノンフィクション
出版社 草思社
四六版 334ページ
価格 各 2,520円
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