AK47、通称カラシニコフと呼ばれる銃を知っていますか?
紛争があるところ、そこには銃があります。それはたいていカラシニコフなのです。
何故カラシニコフが紛争地帯の武器となっているのか?
著者はカラシニコフの設計者、武器商人、そして世界各地の紛争地帯にいる元兵士やNGOに取材を行ったノンフィクションです。
カラシニコフは優れた特徴をもっています。
まず、どんな場合でも使用できるということ。砂嵐の中だろうが、曲がった銃弾だろうが確実に弾丸を発射することができるのは武器として決定的な能力です。
そしてもう一つの見逃せない重要な特徴は、メンテナンスが極めて楽なことなのです。なにせ部品はたったの8個。ばらして掃除して組み立てるのに15分とかからないのです。
カラシニコフはなぜ世界各地にあふれかえっているのでしょう。
いくつかの理由があります。旧ルーマニアでは通貨代わりに貿易の代金として使用したこと。イギリスなどの西側諸国は反体制勢力の支援物資として、世界各地の紛争地へ送りことなどがあげられます。
そしてその紛争が国を良くするための戦いならば、まだ救いがあるのです。
しかし世界の中には、国が国家の体をなしておらず、国民のための政治をしていない、いわゆる”失敗した国”があります。兵士/警官にきちんと給料を支払っているか?教師にきちんと給料を支払っているかで”失敗した国”かどうかを判定することができます。
兵士/警官に給料を支払っていないとどうなるか?彼らは持っている武器で食い扶持を稼ぐか、賄賂を要求するようになります。教師に給料を払っていない国はどういう国か?国の未来を支える子供達を育てる意欲がない国なのです。そういう国では、紛争とは単なる利権争いを指すのです。
そんな不毛な地に送り込まれたカラシニコフは、容易に扱えるという特徴があるがゆえに多数の少年・少女兵を生み出すことなったのです。
この本は単純に、カラシニコフ=銃が悪い、という本ではありません。
上記のように問題なのはカラシニコフを扱う人々なのだということを気づかせてくれます。むろん銃は無いほうが良いに決まってます。でもなぜ銃を欲しがる人がいるのでしょう?なぜ銃を渡す人がいるのでしょう?
そして、そこいらじゅうにあふれかえってしまった銃は、どうすればいいのでしょう?この本では解決する一つの方法も出ています。
この本は朝日新聞に連載されていたものですが、これは優れた社会派のノンフィションだと思います。一読の価値があります。そして地球上から紛争を無くすにはどうしたらいいかを考えさせられるきっかけとなります。
カラシニコフ
著者 松本 仁一
ジャンル ノンフィクション
出版社 朝日新聞社
文庫版 269ページ
価格 1,470円
TITLE: 松本仁一『カラシニコフ』(朝日新聞社)
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松本仁一『カラシニコフ』を読んだ。 朝日新聞の連載記事を書籍化したルポルタージュ...
投稿情報: | 2006/06/09 14:42