
コンピューターの発達した現代なら、単語の使われ方はそれこそ検索を行えば一発ですが、OEDが編纂されていた1900年前後は、当然のことながらボランティアの人々が一つ一つ単語を拾うよりほかありませんでした。
OEDの編纂主幹であったマレー博士は、そういったボランティアの中でも類まれなる才能を発揮していたマイナー博士と手紙のやり取りをしていくうちに、次第により深く辞書編纂に当たっての意見を求めるようになります。
汽車で60分余りの距離に住んでいるのに逢ったことのないマイナー博士。忙しくなかなか逢えないことを悔やむマレー博士は、ある日意を決してマイナー博士に逢いにいきます。そこで彼が知ったことは...
スコットランドの貧しい家庭で育ちながらも独学で語学を勉強したマレー博士。一方アメリカの良家に生まれ、宣教師として両親につれられていったセイロンで育ったマイナー博士。二人の人生はある事件を元に絡み合い、そしてあの素晴らしいOEDが生まれたのです。
辞書の編纂というのはこんなにも大変で、それをまとめ上げるのにはかなりの時間を要するものだと初めて知りました。それが最高のものを作ろうとするとなおさらのこと。
そんな根気が必要な作業に人生を賭けた二人。全く生まれも育ちも、そして編纂時の環境も異なる二人ですが、目的は一緒。目的が困難であればあるほど生まれた友情は深いものだった。OED編纂に賭ける物語は非常に興味深いものでした。
博士と狂人
世界最高の辞書OEDの誕生秘話
著者 サイモン・ウィンチェスター
訳者 鈴木主税
ジャンル ノンフィクション
出版社 早川書房
文庫版 280ページ
価格 1,890円
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