地動説のガリレオ、進化論のダーウィン、大陸移動説のヴェーゲナー。
それらの人たちは様々な証拠から、挑戦的な理論を発表してきました。しかしそれまでの考えをガラリと変える必要のある革新的な理論は、到底すんなりと受け入れられるものではなく、さまざまな人々から、その証拠、結論が導き出される過程について、理論的にそして時には感情的に攻撃されていたというのは良く知られている通りです。
そしてまさしく今、地球の遠い過去をめぐってそのような議論の真っ最中にあるのはご存知でしょうか?
その名はスノーボール・アース仮説。恐竜たちが闊歩していた時代よりはるかに昔、先カンブリア紀と呼ばれる時代は、地球は赤道直下も含めて氷に覆われていたという仮説です。
人類の祖先がいたと思われる氷河期でも、赤道直下は現在と変わらない位の暑かったと言われていますから、いかに氷に閉ざされた凍えた時代だったか想像すらできません。しかしその時代があったからこそ、その後のカンブリア紀に続いたというのです。
カンブリア紀は、カンブリア爆発と呼ばれるほど多様な生物が生まれた時代でしたが、それ以前の生物の単純さといい、なにがその多様性を産む原因だったか長い事不明とされてきました。まさしくその原因がこのスノーボール・アースだというのです。
この本はそのスノーボール仮説がどのように発想され、反証に対しどのように説明してきたかを、その提唱者であるポール・ホフマンとニック・クリシティーを初めとする反対派とのやり取りから、人間味豊かに描いています。そういった意味ではサイエンス・フィクションというよりはドキュメンタリーに近いかもしれません。
感情的なやり取りはともかくとして、このようなやり取りが革新的な理論を鍛え上げ、根付かせていくというのがよくわかる本でした。闇雲に革新的な理論を無視するのではなく、論理的に否定しようとする人たちも、ある意味その理論の推進者でもあるような気さえしました。
ちょっと地質学的なところを理解しようとすると、じっくり考えないと理解できない記述もありますが、さらっと流せば読み物としてけっこう面白かったですね。なんといっても、今この時代にこのような議論がされているということがワクワクします。
スノーボール・アース
ガブリエル・ウォーカー 著
川上紳一 監修
渡会 圭子 訳
ジャンル サイエンスフィクション
発行 早川書房
293ページ
価格 1995円
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