美術館とかに行って絵を見たりするとき、その絵が本物かどうか疑ったりしますか?そもそも誰の絵かなんて、そんなこと気にしない?贋作だって本物と見間違えるくらい技量があり、その絵が気に入るかどうかが重要でどっちだっていいような気がします。
ある画家の技法や主題をまねたら、それは贋作になるのかというとそうではないですよね?その絵がすばらしく気に入れば、誰が書いたのかなんていうのは本当はどうでもいい話です。つまり画家の名前が絵の良し悪しを判断するものでは無いはずです。
ただ美術館に見に行く時などは、画家の名前が一つの目安であるのは間違いありません。でもだからといって、まねて書いた絵をまねた画家の作品だと称すると、それは犯罪、その絵は立派な偽物となってしまいます。
トム・キーティングはイギリスの労働階級に生まれ、本当に絵が好きで絵の勉強にのめり込み、そして絵の修復などを行ったきた人です。ところが勉強や修復などの経験を積むうちに、いろいろな画家の技法を身につけ、そして時々その画家が乗り移ったかのごとく、まるでその画家が書いたような絵を書き上げることができたのです。その絵を、彼の友人達は画家のサインを捏造した上で、ゴヤ、レンブラント等の作品と称して売ってしまったのです。その数は二千点以上。
そして、その事件の発覚は、世界的に有名な画廊やオークション会社を巻き込む一大スキャンダルとなったのでした。
この本はその贋作者トム・キーティングの半生を綴った第一部と、そもそもそれらの贋作が本物として流通してしまう美術界の問題についてリポートした第二部とに分かれています。
贋作者にしろ、美術界にしろ日頃あまり接点の無いことですので、非常に興味深く面白く読めました。
贋作者
第一部
トム・キーティング 著
フランク・ノーマン(採録)
第二部
ジェラルディン・ノーマン 著
瀧口 進 訳
ジャンル ノンフィクション
出版 新潮社
306ページ
※ 絶版 図書館で探して下さい。
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