最近、この手の本ばっかりですが...
タイトルを見ると漂流記の魅力について解説した本のような気がしますが、どうしてこれは立派な漂流記そのものです。
1793年に遭難し、ロシアに漂着した若宮丸の乗組員が10年後かけ、日本人として初めて世界を一周し帰国した様子を描いた物語です。ロシアに漂着というと、どうしても大黒屋光太夫の話が有名ですが、それにもおとらず苦節の日々を過ごしています。
若宮丸の場合はシベリアを横断してロシア皇帝に拝謁するまでは一緒ですが、大黒屋光太夫の場合と違い、そこから大西洋を横断。そして南アメリカ大陸のホーン岬を回って、太平洋に出てハワイ経由で日本に帰国します。まさに世界一周!
鎖国を守ろうとする幕府と交易を迫るロシア。その交渉の道具としてロシア側に利用されて帰国することができたのですが、鎖国の妨げになってはと冷たい態度をとる幕府。その狭間で、せっかく日本に帰国したというのに、帰郷もできず出島から出れない若宮丸の乗組員。気を触れるものもでてしまいます。ようやく最後は帰郷することもできますが、その頃海外に出た日本人がどう扱われていたのかがよく分かります。
非常に興味深い内容なのですが、もう少し詳しく読みたいと思ってしまいました。逆を言うと軽く読めます。
吉村昭 著
新潮新書
191ページ
680円
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